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最高裁判所第一小法廷 昭和61年(行ツ)113号 判決 1988年3月03日

兵庫県多可郡八千代町俵田四番地の三

上告人

小牧定織物株式会社

右代表者代表取締役

小牧勝

右訴訟代理人弁護士

小沢秀造

高橋敬

田中秀雄

薦田伸夫

兵庫県西脇市西脇字後町七七一番地の一一八

被上告人

西脇税務署長

住本好正

右指定代理人

竹本廣一

右当事者間の大阪高等裁判所昭和六〇年(行コ)第二八号法人税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六一年三月一四日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小沢秀造、同高橋敬、同田中秀雄、同薦田伸夫の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件冷房機は租税特別措置法(昭和四九年法律第一七号による改正前のもの)四五条の二に定める特別償却の対象となる機械及び装置に当たらず、本件更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に違法はないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論意見の主張は、その前提を欠く。論旨は、ひつきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき原判決を論難するものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文とおり判決する。

(裁判長裁判官 高島益郎 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 佐藤哲郎 裁判官 四ツ谷巖)

(昭和六一年(行ツ)第一一三号 上告人 小牧定織物株式会社)

上告代理人小沢秀造、同高橋敬、同田中秀雄、同薦田伸夫の上告理由

第一、理由不備

原判決に影響を及ぼす理由の不備がある。

一、原判決は、合成繊維の製造において温湿度調整の必要を認め(温湿度調整の必要は、合成繊維の織糸の帯電による糸切、おりむら防止のためであり、糊付のためではない。)しかも、製造工程において冷房機による冷房を行えば織物設備に該当すると正しく指摘している。

ところが原判決は証人小牧定一が「控訴人工場では、温度計、湿度計を見て本件冷房機を作動させるのではなく糸切れが生じた場合作動させる・・」と証言していることをもつて本件冷房機が織物機械にあたらないとしている。しかしながら右小牧定一の証言は「糸切れを防止するため本件冷房機を作動させている。」というものなので、まさに製織のため本件冷房機を使用していることを意味し、原判決の判断と理由には齟齬があるものと言わねばならない。

あるいは、原判決が、本件機械が「温湿度調整のため」に使用されず「糸切れ防止のため」に使用されているから、本件機械が温湿度調整機にあたらず、織物機械と言えないという趣旨なら、原判決は明らかに事実誤認にもとづくものであると言わねばならない。すなわち、温湿度調整は、もつぱら製織における「糸切れ」「織むら」というトラブルを防止するために行われるものであり、糸切れの状況をみて温度や湿度の調整をすることは当然のことだからである。製織機の状況、糸のよしあし、糊の状況、糊のつきぐあいにより、「糸切れ」「織むら」の生じる温度や湿度が日々、時々変化する以上、小牧定一の証言するように、「糸切れ」の状況をみて本件機械を作動させるのは当然のことなのである。

二、原判決の本件控訴人工場の屋根がのこぎり型で外気との遮断が完全ないこと、昭和五〇年九月一九日の工場内温湿度の程度が本件機械を織物機械としない根拠であるとしているのも、根拠たる事実と判断に齟齬がありまた事実誤認もあることは、上告人がすでに昭和五四年一一月二二日付準備書面で明らかにしたとおりである。すなわち、昭和五〇年九月一九日午後二時五〇分に、工場の床から三メートルのところで、温度三一度、湿度五五%のところ、冷房機が作動していなかつたので本件冷房機の設置目的は、品質管理でないとするのは明白な誤りである。すなわち、床から三メートルの地点と織物機械の設置してある場所の温度差は、小牧定一が計測したところでも三度ちがい製織工程においては温度が(小牧定一尋問調書(原審)一六丁)二八度だつたので、織物には適正な温度、湿度が維持されていたのであり、昭和五〇年九月一九日、午後二時五〇分当時は、品質管理のためには、冷房機の作動が必要でなかつたのである。逆に本件冷房機が工場で働く従業員の作業環境保全のためなら、少なくとも、湿度が少々上昇しても二五度以下にしなければならにことが明らかであり、それにもかかわらず、冷房機が作動していなかつたのは、本件冷房機の設置が従業員の作業環境を良くするためのものでないことの証左である。

また、本件工場の屋根が鋸型で窓も大きいことを理由に外気との遮断が完全でないとすることは、前にも述べたとおり、梅沢証言のカマボコ型の屋根の工場 空気の外気遮断が完全、鋸型の屋根の工場 空気の外気遮断が不完全という「常識」なるものにのっかり、本件工場の状態については、何らの検証もせず、しかも何らの検分もしない、ただ、本件工場が鋸型の屋根をもつということを仄聞して、無責任に更正決定をした梅沢の証言をう飲みにしたものにすぎず、事実は、小牧定一が供述したように本件工場は、もとは板張りで窯も大きかつたところラス張りをしてモルタルを塗り、窓をふさぎ、天窓は全部下からビニールをはり、しかも窓は二重窓にされた(小牧定一尋問調書九丁)という外気との遮断に特段の改造を行つたものであり、原判決の判断は誤つた事実にもとづきなされているものと言わねばならない。仮に梅沢の証言が信用できると判断しても、同人は、本件工場を調査したことはないのだから少なくとも現場検証が必要なところ、原裁判所は、何の証拠もないまま、神戸地方裁判所の昭和五四年八月二〇日言い渡しの判決の誤つた事実認定をうのみにしているのであり、この問題につき、審理を尽くしていないことは言うまでもなく、昭和六〇年四月二三日言い渡しの本件上告審判決の破棄差戻の趣旨にももとるものと言わねばならない。

第二、法律違背

原判決には判決に影響のある法令違背がある。

原判決は「本件冷房機は租税特別措置法四五条の二第一項、同法施行令第二八条の五の機械及び装置とは認められない」とする。しかし、右は右法令の解釈を誤り、それは判決の結論に直結しており、判決に影響のある法令違背であると言わねばならない。

本件の様に、機械なのか建物付属設備なのかという場合、右の解釈は、科学的な根拠を検討し、又常識にかなうものでなければならないことは明らかである。(甲第一三号証、報告書一)

個別耐用年数表の織物設備に温湿度調整機があり、織物のために温湿度の調整が必要もしくは望ましいことは当事者間に争いがない。したがつて、本件冷房機が、右温湿度の調整の一端を担いうることも、だれしも争いがないことであろう。原判決のいう温湿度調整機のための機械でない根拠とする屋根の形とか空気の密閉などということは相対的なことで、調整しうるかどうかという論理必然的に結びつくものではない。又主観的にも上告人会社は、織物の製品の向上のため本件冷房機を入れたのであり、(上告人会社代表者小牧定一の供述)それに反する証拠はない。原判決は、国税審査官が上告人工場に行つた時本件冷房機が稼動していなかつたとか、小牧定一の証言ではなるべく作動させない様にしていたとかあれこれ疑いと偏見の目で上告人をみるが、右のことと本件冷房機が製品管理のためか働く人々のためかとは直接関係はない(まさか原判決は全く不要な冷房機をいわばかざりのため置いていると認定しているのではあるまい)。第一審判決は、国税審査官が、上告人工場へおもむいた際、温度が三一度で冷房機が稼動していなかつたと認定し、原判決もそれをそのまま認定しているのであるが、右の認定はすなわち本件冷房機が働く人のため、労務上のものではないことを示しているのである。(労務上のものであれば25℃を越えれば冷房機を稼動させていたであろう。)

右のように本件冷房機が機械設備にあたることは、科学的、常識的に、ものごとを素直にみればだれにでも明らかなのである。原判決は屋根の形とか、たまたま稼動させていなかつたとかということにこだわつているが、これは人をみたら泥棒と思え~納税者をみたら脱税をしていると思え式の発想に陥つているのではないかと思われ、木をみて森をみずのたとえのとおり、本筋をみない認定であるといわざるをえない。

本件冷房機は製品管理上必要な織物設備であり、いわゆる機械設備であり、原判決は破棄をまぬがれない。

第三、原判決は、理由付記についての法令の解釈を誤り、以来の判例にも違反している。

上告人は、帳簿に本件冷房機を機械として記載し、申告に際しては、機械として申告したことは当事者間に争いがないところである。

右の意味で、帳簿の記載を否認されたものであることは明らかである。原判決は、「属性に関する評価を修正するものにすぎないから、右更正をもつて帳簿書類の記載自体を否認するものではない」とする。しかし、脱税を意図する納税者でない限り、脱税に関する紛争は、主として法律の解釈、事実の評価にかかわるものであつて、そのような場合、帳簿書類の記載自体を否認するものでないとすると、青色申告者の更正の理由付記の制度は、きわめて限られた場合にしか適用されず、制度として形骸化したものに堕落してしまうであろう。

機械として記帳したものが、建物付属設備とみられるのは、帳簿の否認であることは明らかである。青色申告者は、右の場合申告を否認されるについて十分な理由を記載される権利を有するのである。

このことは、以下に引用する最高裁判所の確定判決によつても明らかである。

1 青色申告に対する更正処分等に付記すべき理由について、最高裁判所は次のような一連の判断を下している。

<1> 最判昭三八・五・三一(民集一七・四・六一七)

更正通知書に更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」

と記載されていた事案について、

「一般に、法が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するものとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから、その記載を欠くにおいては処分自体の取り消しを免れないものといわなければならない。ところで、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきであるが、所得税法(昭和三七年法律六七号による改正前のもの)四五条一項の規定は、申告にかかる所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがない旨を納税者に保障したものであるから、同条二項が付記すべきものとしている理由には、特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を適示して処分の具体的根拠を明らかにすることを必要とすると解するのが相当である。しかるに、本件の更正処分通知書に付記された前示理由は、ただ、帳簿に基づく売買差益率を検討してみたところ、帳簿額低調につき実際に調査した売買差益率によつて確定申告の所得金額三〇九、四二二円を四四四、六九五円と更正したにとどまり、いかなる勘定科目に幾何の脱漏があり、その金額はいかなる根拠に基づくものか、また調査差益率なるものがいかにして算定され、それによることがどうして正当なのか、右の記載自体から納税者がこれを知るに由無いものであるから、それをもつて所得税法四五条二項にいう理由付記の要件を満たしているものとは認め得ない。」と判示。

<2> 最判昭三八・一二・二七(民集一七・一二・一八七)

更正の理由として「売上計上もれ一九〇、五〇〇円」と記載されていた事実について、

「当裁判所が、昭和三八年五月三一日言い渡した判決(昭和三六年(オ)第八四号)は、青色申告の更正の理由付記について、特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を適示して処分の具体的根拠を明らかにすることを必要とする旨を判示しており、そして、その理由として、青色申告の制度は、納税義務者に対し一定の帳簿書類の備付、記帳を義務付けており、その帳簿を無視して更正されることがないことを納税者に保障したものと解すべき旨を判示しているのである。およそ、納税義務者の申告に対し更正をするについては申告を正当でないとする何らかの理由がなければならないが、青色申告でない場合には、納税義務者は上述のような記帳義務を負わず、従つて申告の計算の基礎が明らかでない場合もあるべく、更正も政府の推計によるよりほかはなく、その理由を明記し難い場合もあるであろう。しかし、青色申告の場合において、若しその帳簿の全体について真実を疑うに足りる不実の記載等があつて、青色申告の承認を取り消す場合は格別、そのようなことのない以上、更正は、帳簿との関連において、いかなる理由によつて更正するかを明記することを要するものと解するのが相当である。かく解しなければ、法律が特に青色申告の制度を設け、その更正について理由を付記せしめることにしている趣旨は、全く没却されることになるであろう。そして、かかる理由を付記せしめることは、単に相手方納税義務者に更正の理由を示すために止まらず、漫然たる更正のないよう更正の妥当公正を担保する趣旨をも含むものと解すべく、従つて、更正の理由付記は、その理由を納税義務者が推知できると否とにかかわりのない問題といわなければならない。(中略)

以上説明のとおりであるから、本件更正の理由として「売上計上もれ一九〇、五〇〇円」との記載だけでは、いかなる理由によつて計上もれを認めたかが明らかでなく、理由として極めて不備であつて、右の記載をもつて法律の要求する理由を付記したものと解することはできない。」と判示。

<3> 最裁昭四七・三・三一(民集二六・二・三一九)

再更正処分通知書にその理由として「借地権計上もれ金三三〇万円」と記載されていた事案について

「右の記載によつては、・・被上告人において、その借地権がどのようなものか、その価額が何故に課税対象として計上されるのであるか等を全く知ることができないというほかはないのであつて、原判決が再更正処分の付記理由には不備の違法があるとした判断は正当として首肯することができる。」と判示し、更に「(旧法人税法)三一条の三を適用して更正処分をする場合にも同法三二条後段の規定により理由を付記すべきものと解すべく」として、同族会社の行為計算の否認規定を適用して更正を行う場合にも理由付記が必要であると判示した。

<4> 最裁昭四七・一二・五(民集二六・一〇・一七九五)

係争事業年度所得の更正の理由として「営業譲渡補償賃金計上もれ、一一五五万円」「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、精算所得の更正理由として「代表者仮払金三九万六八八九〇円」「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されていた事案について「(右のような記載から上告人)主張のごとき更正理由を理解することはとうてい不可能であり、その記載をもつてしては、更正にかかる金額がいかにして算出されたのか、それがなにゆえに被上告会社の課税所得とされるのか等の具体的根拠を知るに由無いものといわざるをえない。

してみると、処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立の便宜を与えることを目的として更正に付記理由の記載を命じた前記法人税法の規定の趣旨にかんがみ、本件更正の付記理由には不備の違法があるものというべきである。」と判示し、更に、従来下級審裁判例が分かれていた付記理由不備の瑕疵は異議決定書または審査裁決書に十分な理由が記載されることにより治癒されるかという問題について「更正における付記理由不備の瑕疵は、後日これに対する審査裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、それにより治癒されるものではないと解すべきである。」として、最高裁の立場を明らかにした。

<5> 最裁昭五一・三・八(民集三〇・二・六四)

更正の理由として、「土地評価減一、三〇八、五一二円。北九州市八幡区本町五丁目秋田商会木材株式会社より譲り受けた下関市幸町八の三宅地六七・八九坪の譲り受け価額が時価に比して著しく低い価額であり、時価との差額は贈与を受けたものと認められるから評価減をなしたものとして益金に加算する。時価二、二四三、四一五円譲り受け価額九三四、九〇三円。差引一、三〇八、五一二円。」

と記載されていた事案について、

「法人税法三二条が青色申告にかかる法人税につき更正をする場合には更正通知書に更正の理由を付記すべきものとしているのは、更正処分庁の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものであり、したがつて、それはまた、申告にかかる所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載にもとづくものである以上、その帳簿書類の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障したものである。右のような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、帳簿書類の記載を否認して更正をする場合において更正通知書に付記すべき理由としては、更正にかかる勘定科目とその金額を示すほか、そのような更正をした根拠を右帳簿書類以上に信憑力のある資料を適示することによつて具体的に明示することを要すると解するのが相当である」としたうえ、「右の記載によれば、本件更正処分は、上告会社が秋田商会木材株式会社から譲り受けた本件土地の譲受価額が時価に比し著しく低額であるから、その差額は贈与を受けたものとして益金に加算すべきであるとしてなされたものであることがうかがえるのであるが、右更正の基礎となつた本件土地の時価がいかなる根拠、基準に基づいて算出されたものであるかを知ることは全く不可能であるから、右の程度の記載では、理由としてはなお不十分であつて、法の要求する理由付記があつたものということはできない。」と判示して、原判決を破棄した。

<6> 最判昭五四・四・一九(民集三三・三・三七九)

更正の理由として1、「(1)主要取引銀行である千葉銀行館山南支店の取引は、館山食品の借入金による松井一貫個人名義により取引されていること。(2)館山支店は昭和三九年一月館山食品の倒産時に設置されており、取引内容も債務整理関係のみで貴社の支店とは認められないこと。」2、「館山食品貸付金勘定より期末一括して支払利息に振り替えた下記のものについては館山食品の負債整理のためのもので会社の損金と認められません。」3、「館山食品に対する未払家賃は債務未確定のため」と記載された事案について、

従来の判例理論を展開したうえ、右1、2について「右更正理由の記載からは、右各支払利息が何ゆえに館山食品の負債整理のためのものであるとされるのか、また、館山食品の負債整理のためのものであると何ゆえに上告会社が現実に支払つた利息を損金として計上することが許されるのかについてその具体的根拠を全く知ることができないうえ、右支払利息を館山食品の負債整理のためのものと認定した資料の適示もないのであるから、右の程度の記載では、理由の付記としてはなお不十分であつて、法の要求する更正理由の付記があつたものということはできない。なお、仮に右1の支払利息の損金算入否認が、上告会社の館山支店なるものが上告会社の支店たる実体を有するものとは認められないので右館山支店関係の取引全体が上告会社の営業取引とは認められないとしてされたものであるとしても、前記更正理由の記載のみでは、いまだ何ゆえに右館山支店が上告会社の支店と認められないのかについてその具体的根拠を明らかにしているとはいえないうえ、そのように認定する資料の適示もないのであるから、法の要求する更正理由の付記があつたものとすることはできない。」とし、右3について、その記載を善解すれば、上告会社と館山食品との間には賃貸契約が締結しておらず、また、上告会社は賃料の支払いもしていないから、使用貸借であつて、債務として確定していないと判断してこれを否認したものであり、前記更正理由の記載はその趣旨を記載したものであるとの「被上告人主張の趣旨を記載したものと解することができないでもないが、被上告人が右のような認定をするに至つた資料についてはその適示が全くないのであるから、右更正理由の記載もまた、法の要求する更正理由の付記としてはなお不十分なものであるといわざるをえない。」と判示して、初めて更正理由認定資料の適示の欠如を理由として更正を違法とした。

2、右の一連の最高裁判例により、「法が更正通知書に更正の理由を付記すべきものとしているのは、法が青色申告制度を採用して、青色申告にかかる所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものというべきであり、したがつて、更正をする場合において更正通知書に付記すべき理由としては、単に更正にかかる勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を帳簿記載以上に信憑力のある資料を適示することによつて具体的に明示することを要するものというべきである。」とする確定判例が既に形成されている。

第四、「過少申告加算税」についての当否についてもさらに審理を尽くさせる必要があるということが、本件の上告審の判決であつた。しかし、原判決は、第一審判決をそのまま踏襲するのみであり、法令の解釈を誤つたものである。

一審判決は本件加算税は一種の制裁であるとし、その理由として「被告税務署管内では修正申告を勧奨していることが認められ」ることも一つの理由としてあげている。

我国では申告納税制度がとられており、それは納税者の権利でもあり、義務でもある。しかも、上告人は青色申告法人である。そこで自分なりの法の解釈により申告しなけばならず、上告人は万全を期し、税理士に依頼し、本件の申告をしたのである。右税理士の本坊美通氏は、事実関係、法令、通達を精査の上、本件冷房機が機械にあたると判断して申告したものである。

本件の場合、右のような制裁を課する必要はない。

憲法第三二条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と規定する。周知の様に、明治憲法の下では、行政裁判は一種の行政命令であり、行政権の作用と考えられていた。現憲法の右の裁判を受ける権利は、行政事件に関して、最も大きな意味をもつとされるゆえんである(憲法講義乙二八八頁有斐閣大学双書)。

本件のように納税者が税務署と法令の解釈について見解がちがう場合、不服申立をして、最終的に裁判所でケリをつけることは、きわめて健全な市民の態度であり、自主申告制度も右の態度につらなるものである。上告人の本件訴訟に至つた態度は、奨励するに足りることであつて「制裁」をもつて抑圧される様なものでないことは明らかである。原判決の本件加算税についての判断は、法令の解釈を誤つていると同時に右裁判を受ける権利を無視する、その意味で憲法違反の判決であり、破棄されるべきものである。

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